(3)
固継の里家は、二進かそこらか。
がし、と裏の扉が震えた。蘭玉は跳び退り、桂桂の手を引き、遠甫に抱えられるようにして正堂(ひろま)へと走った。その背に窮奇の爪で裂かれた扉の木っ端が飛んでくる。正堂の扉を閉め、院子(なかにわ)に駆け降りた。――とにかく、なんとかして里祠へ。里木の下なら、妖魔は襲ってこない。
中門へと走廊(かいろう)を走り、石段を駆け降りて前院(まえにわ)に出る。背後で子供たちの悲鳴が続いていた。
……
大門(もん)の軒下まで駆け寄ったとき、桂桂がひっと声を上げた。思わず桂桂の視線を追って蘭玉は振り返る。中門の屋根で身を屈めた窮奇の姿が目の中に飛びこんできた。(WH万里上188,189)(新万里上199,200)
入り乱れて走る足音が奥から聞こえる。壁に爪を立てて、蘭玉は走廊に出、蹈鞴を踏んで走廊の手摺に縋る。助けを求めて外に飛び出そうか、わずかに迷い、手摺を掴んで走廊を奥へと向かった。
……桂桂。
焼けつくような背の痛みに耐え、蘭玉は走廊をよろめくようにして走る。客堂と書房に分かれる角まで来て、床に転がった桂桂と、捕らえられた遠甫を見つけた。(WH万里下158,159)(新万里下168)
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