辞書的な意味となると、「(1)武器を入れる倉庫。武器庫(2)将軍の執務する場所」となっている。
(2)のほうが、近いだろうとは思うけど、ちょっと違う気がする。
将軍は自らの軍のために軍府を持つ。軍府に所属する官僚が軍吏(ぐんり)だった。軍吏のうち、地位の高いものを幕僚と呼ぶ。(新白銀二312)
執務する場所……という、固定のものではないと思う。部署的なニュアンスを感じる。
そもそもだ、夏官だの幕僚だの軍吏だのと、その辺がよくわからんで、記述を見比べてみる。
かつては阿選軍の軍吏(ぐんり)――中でも軍吏を束ねる軍司(ぐんし)だった。(新白銀三362)
幕僚の長――軍司(ぐんし)だった叔容様が夏官長に就任された際、司馬輔か小司馬にと望まれたらしいが、(新白銀二312)
幕僚、ひいては軍吏を束ねるのが軍司。
正頼は、そもそも驍宗軍の軍吏(げかん)だった。(WH華胥23)
これはちょっと脇に置いといて……。
正頼は、そもそも驍宗軍の軍吏(ぐんり)だった。(新華胥21)
余州にも名高い驍宗軍、その麾兵(ぶか)と軍吏(ばくりょう)たち。(新黄昏84)
先の箇所もあるし、これらからも、まあ、軍吏という官僚のうち、高位のものが幕僚というとわかる。軍吏に「ばくりょう」とルビが振ってあるのも、まあ、幕僚な軍吏のことを指しているのだろう。それぞれ何人くらいいるのかねえ?
「この有様で、幕僚になるような有能な軍吏に見えるか?」
書卓の上は混沌としていて、確かにきりきりと仕事を片付けているようには見えなかった。(新白銀二214)
卒長までは専属の軍吏も付かないし、事務仕事も自分でやらねばならない。実務は煩雑だし法令の知識も要る。(新白銀二215)
書類仕事が苦手で、それで幕僚ではないと自嘲しているのだから、軍吏はやっぱりそういう仕事をするのだと思う。
強いて言えば、軍吏とはいえ長年命の遣り取りをする前線で働いてきた士卒(へいし)の勘だ。(新白銀二168)
これはつまり、軍吏は実際に敵と戦うわけではないが、その近くでその様を目の当たりにしてきた、という意味だろう……。
確かに正頼や恵棟が、剣を持って敵陣に乗り込んで、斬った張ったの大立ち回り……というのはしていなさそう。
「巌趙は王宮内に数多くの人質を取られている。兵卒に幕僚、近しい者たち」(新白銀三275)
並列で語るということは、兵卒と幕僚は別物ということだろうし。
字通によると、軍吏は「軍中の文官」で幕僚は「参謀」らしい。周瑜か!(違)
これに際し、叔容は恵棟を小司馬に推挙してくれた。なのになぜか辞令が下りないまま今日までの歳月が過ぎてしまった。
夏官と軍吏(ぐんり)の兼務はできない。推挙にあたり、恵棟は幕僚の職を解かれていた。(新白銀二165)
成笙はそもそも、禁軍左軍を預かる将軍だった。同じく夏官に属すとはいえ、成笙は本来、武官であって文官ではない。(漂舶10)(記念149)
つまるところ、夏官は文官で、禁軍が武官ってことだと思うのよね。
で、軍吏は武官に当たる、ということなのだろう……。とはいえ、軍吏は事務官だと思うので、文官ぽく感じるのだけどな。
やってることは文官だけど、従軍するので武官扱い……ということだろうか。
基本的に文官の集まりである夏官の中で、(新海神194)
だし。
軍隊のメンバーが自衛隊員で、夏官がそれ以外の防衛省職員……みたいな感じ? あと、警察組織も含むか。
出征してしまったら、軍吏が首都なり州都なりで仕事をすることはできないから、夏官と軍吏の兼務はできない、ということなのかな? 軍吏は将軍とか指揮官について事務仕事をするけど、
夏官はもっと大局的な仕事をするから、兼務していたら自分のついている将軍を贔屓してしまう……とか、そういうことかな?
軍府は軍吏たち事務官のグループ、ブレーン集団みたいな?
将軍は自らの軍のために軍府を持つ……。……。あ。自らの軍のため、だから、自らのため、ではない。卒長以上には専属の軍吏がつくのだから、ひとりずつ付いたとしても、黒備一軍につき125+25+5+1=156人の軍吏がいるということになるな。
それら軍吏が将軍の軍府に属し、指揮官たちに配属される……。地位の高いものが地位の高い指揮官に配されるのかはわからんが、まあ、理屈から言えばそうなるだろう。
専属秘書以外にも、軍の雑用を差配する人間がいるだろうから、ざっと一軍に200人くらいは軍吏がいるのではないか。
両以下では軍吏はいないのか、専属でない掛け持ちの軍吏がいるのか?
軍府は総務部あたりと考えたらいいかな。
結論 卒長以上の指揮官に付いて事務仕事を行うのが軍吏。
軍吏のうち、高位のものが幕僚。軍吏の長が軍司。
夏官は政府の官僚、軍吏は従軍文官。
軍府は各軍の総務部。
みたいな?
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