常世文字について

 書きつけられた文字は、すこしだけ細部がちがっている。それでも漢字にちがいなかった。(WH月影上P99)(新月影上102)

とあります。
確かに、万里(下)P339の挿絵で見える「慶」の一部分から察するに、よく似てます。
が、アニメの文字って結構違う気がします。
なので、アニメのDVDを全部浚って、常世文字を収集してみました。
アニメネタなので、原作には関係ないですよー。


……で、ざっと見た限りで言いたいこと。
「細部が違う」とか言うレベルじゃない。象形文字ですよこれ。
特にこれ。  大「大」
しかもこの人偏。  倭「倭」  どう見てもヒト。象形文字といったほうがいいのでは。
でも、おおかたの文字は、新篆体に似ているようです。
あ、そんでもって右から左へ書くようです。

(1)とりあえず国名を並べてみます。
慶雁戴
奏巧漣
範才舜
柳恭芳
ちなみに芳には芳もありましたが、これは単にフォントの違い、というところでしょう。
そして、四州国の「州」は州です。
「国」は国。あらら?どう見ても、どの箇所見ても、点がないんですけども。


(2)じゃあ次は地名。
「配浪」は配浪
「五曽」は五曽  ちなみに「五」はまんま新篆体ですよ。これ。五
「拓丘」は拓丘   「拓」も新篆体に似てます。これ。拓
「河西」は河西
「芳陵」の「陵」は陵
「北路」は北路
とかです。
これで面白いことに気づきました。風の万里五巻で、浅野と小司馬が話しているときに後ろにある屏風。
「五曽」とか「河西」とか、「北」が見えたから「北路」かな。とにかく地名書いてあるんですよ。
なんじゃその屏風。他国の、それも田舎の地名書いた屏風なんて普通ないでしょー。何を使っているんだか。

(3)次は人名。
「中嶋陽子」は中嶋陽子  「中」と「子」は新篆体に似てます。中子
「木鈴」は木鈴  「木」は新篆体に似てます。木
「杉本優香」は杉本優香  「杉」は新篆体に似てます。杉  「本」は、他の「木」とかから考えて、もっと丸みがあってもいいような。それこそ新篆体の本のように。
「浅野郁也」は浅野郁也  でもこれ、「郁也」なの、本当に?四文字目はむしろ「介」に見える。「浅」は右側から考えて、旧字体バージョン「淺」から来てるのかしら。
「昇紘」は昇紘  「昇」って、なんか鳥が踊ってるみたいで笑えるんですけど。
「籍恩」は籍恩
「黄姑」は黄姑  「姑」って、「女」と「古」が左右逆なんですねー。
「更夜」は更夜
「孫」は孫
「院白沢」は院白沢


(4)建物とか。
「里府」は里府
「桃林園」は桃林園
ただ、別のシーンで宿の名前が映ったとき、おそらく「園」と思われる字が園だったんですけど、フォントの差とか言う以上の違いのような気がします。違うのかな。
「祠」は祠


(5)官職名とか。
「冢宰」は冢宰
「天」は天「地」は地「春」は春「夏」は夏「秋」は秋「冬」は冬  「夏」なんてありえないほど象形文字。(象形って言っても、一体何をかたどったのか)
「○官長」の「官」は官、「長」は長
「公主」は公主

これでですね、「春」の字がわかったわけですが。
清秀が差し出した母親の旌券には、?春とありました。
姓は何と読むのかわかりませんが、名は「春」なんでしょうね。


(6)ハンコの印影。
これについてはオドロキの事実が。おかしなところがありました。
とりあえず順番に挙げますと、(1.右上2.右下3.左上4.左下 の順番です)
はっきり言って、三文字目と四文字目はなんて読んだらいいのかわからないです。
    ※追記:三文字目は「之」、上ふたつの四文字目は「印」、
         下ふたつの四文字目は「璽」だと教えていただきました。
白沢→冢宰之印 「冢宰之印」
昇紘→郷長之印 「郷長之印」
黄姑→采王之璽 「采王之璽」
陽子→慶王之璽 「慶王之璽」
……さて、お気づきになりましたか? おかしなところ。
陽子の御璽の一文字目。慶ですけど。これ、前述の国名の漢字ですよね。「景王」と号を書くなら、 国氏の「景」でなければなりません。実際、「采王」はきちんと才とは別の字の采でしょう?
御璽の漢字間違えたらダメやん。


(7)ほか。
「除」は除
「於」は於
「仙」は仙
「殊恩」は殊恩  「殊」は新篆体と似てます。殊
「赤」は赤  これも新篆体と似てます。赤
「海」は海
「安鎮気心主」は安鎮気心主  「気」はむしろ「氣」っぽいですね。
「合格」は合格  「合」も新篆体と似てます。合  「格」も「姑」みたいに左右が逆ですねー。
あと、肉が吊るしてあるお店にかかっていた札の字なので、肉?は「肉」かな?と思います。


(8)総論。
以上より、部首の傾向が読み取れます。
木偏 木偏
こざと偏 こざと偏  (でも、「陽」は陽なのですよ……)
国構え 国構え
草冠 草冠
竹冠 竹冠
人偏 人偏  超象形文字。
さんずい さんずい  新篆体チック。
ウ冠 ウ冠

あと、つくりのほうの傾向では、
口 口
また倭(倭)、安(安)、姑(姑)から察するに、 「女」のところにはヒトが入りがちなのでしょうね。

(9)応用。
陽子が里家で御璽を押していて、桂桂らが来たために閉じた書類の文章。
これを読んでみたいと思います。はっきり言って、わからない字のほうが多いので、解読は無理ですが。
       ?春(春)
       ??
       ??
        官(官)
       ??
 冬(冬)     ??
 春(春)     ??
 官(官)     ??
御璽長(長)     ?
      ??
差出人……「冬春官長」って何。連名?
御璽は、先ほど述べましたとおり、間違ってますよね。


(10)結局読みがわからなかった字。
推測はできても断定はできないので。
?????
追記:左から、「洛」、「?」、「糸」、「君」、「千」だろうと教えていただきました。


以上で、無意味なレポートを終わります。


追記  これらの文字は、「篆書」のひとつ「金文」であると教えていただきました。
    金文に詳しい方、(9)の公文書、解読してください(笑)